本の話 

●頂いた本、最近読んだ本の一部を紹介します。現在の私の研究と深く関わりのある本は、営業秘密(?)の観点から省略しております。
●ご著書お送りいただいたみなさま、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
赤い字で記しているのが頂いた本です。
●最近のものが上で、降順になっています。


2024年

・樋口大良+子どもヤマビル研究会『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』(増補版、ヤマケイ文庫、2024年)
 鈴鹿の麓に住む子どもたちと先生が、仮説を立て実験を行って数々の発見に到った作業の記録。面白かった。
 「ヒルは木から落ちてこない」は確かにそのようである。御在所岳には少なく藤原岳に多いのは前者が花崗岩、後者が石灰岩の山だからというのは、まだ確かな証明には到っていないとのこと。
 ヒルを山で広めたのは鹿のせいであるというのもよく言われるが、広めるのに一番貢献したのは雨による水の流れというのも説得的であった。鹿ももちろん関与しているが、その他に蛙、猪もヒルの広がりに関わっている。

・奥田昌子『血圧を最速で下げる』(幻冬舎文庫、2020年)

・下田立行訳、ヘリオドロス『エティオピア物語』(岩波文庫、2024年)
 
今は亡き下田君の「叢書アレクサンドリア図書館」第十二巻、国文社、2003年刊が文庫化されて岩波文庫に入った。

・松永K三蔵『バリ山行』(講談社、2024年)
 芥川賞受賞作というからにはどれほど内容の深刻さ、文体の新しさがあるのかと思って読んだら、拍子抜けするほど読みやすく、一気に読んでしまった。
 面白かった。1つには私も山歩きを趣味にしているからかもしれない。「バリ」とか「ヤマップ」とか中で出てくる用語が分からない人には面白さがもう一つ伝わらないとも考えられる。
 著者はもっぱら六甲山系をフィールドにしているようで、私はあまり詳しくない。この山系の山行を重ねている人には面白さがさらに増していることだろう。
 山の風景の描写、山を歩いている人間の心理や体の動きの描き方は秀逸で、これと会社の人間関係を絡ませたところが、この作品の優れたところと言える。


・加藤雅俊『1週間で勝手に血圧が下がっていく体になるすごい方法』(日本文芸社、2024年)
 この本を読むよりも前に降圧剤をやめても、血圧は変わらず。125/75 前後。一体あの薬はなんだったのだろう。
 勤めを辞めて(2017年)ストレスがなくなったから薬をやめたいと思うと何回言っても全く耳を貸さなかった医者。とうとうホームドクターを代えた。

・丹下和彦『ギリシア悲劇余話』(未知谷、2024年)

・J・ブレーデン、R・グッドマン(石澤麻子訳)『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』(l中央公論新社、2021年)
 筆者の1人が働いていたこともある「メイケイ学院大学(MGU)」(仮名)に実は私も数年非常勤講師をしていたことがあり、懐かしかったが、
同族経営の「レジリエンス」により、倒産を免れ、生き残ることが出来たとは、きれいごとすぎる結論である。解説の苅谷剛彦氏も東大から
オクスフォード大学に移って長く、日本の大学事情をあまりよく分かっていられないようだ。
 

・加藤雅俊『薬に頼らず血圧を下げる方法』(アチーブメント出版、2017年
 ついにかかりつけの医者を代えることにした。そのきっかけの1つとなったのが本書。

・永田宏『健康診断の読み方』(講談社+α新書、2024年)
 人間ドックの診断の結果の数値、その数値の意味するところを再考する手がかりを得た。

・依田義丸『連?』(思潮社、2024年)
 思潮社編集部の添え書きには「依田義丸氏の新詩集『連?』が刊行の運びとなりました。依田氏は先年来の闘病中に本書を纏め、校正刷の確認を終えてご献本の指示までも済ませながら、出来上がりをみることなく、三月十四日に逝去されました。ご遺志にそってご献本をお送りいたします次第です」とあった。

 依田君と会って親しくなったのは、日本演劇学会関西支部理論部会の会が初めてであった。私が留学から帰ってきた年の秋ぐらいであったか。1975年のことである。そうとすると50年近くになる。もっとも、この理論部会が解散するような形で終わって以来、会うことはほとんどなく年賀状のやりとりだけのつきあいとなっていたので濃密な関係は25年ぐらいか。

 今年の年賀状はお身内のご不幸で喪中を知らせる葉書が来ていたが、昨年の年賀状には「元気ですか。老いは実に理不尽な暴力だと思うこの頃です。ご健康をお祈りしています」とあったので、なにか自らの最後を予見していたのかもしれない。

 思い出に残るエピソードは数多あるが、またなにかで書くこともあるだろう。今はただ呆然としている。

・松永正訓『開業医の正体』(中公新書ラクレ)
 手術を受けてから医者との関係でいろいろ考えさせられている。
 もっと踏み込んだ内容かと思ったが、それほどでもなかった。

・ラテン語さん『世界はラテン語でできている』(SB新書、2024年)
 この本でラテン語に関心を寄せる人が増えればいいのだが・・・。
 日本の大学でラテン語の授業のあるところはそれほど多くはない。さらに、その授業の担当が非常勤講師ではない大学は極めて少ない。このことはどの程度知られているのだろう?

・特定非営利活動法人 CIO Lounge『DX時代を打ち勝つための30の提言』(ダイヤモンド社、2024年)
 山友JOEさんから頂戴した。彼も執筆者の1人。

・駒込武(編)『「私物化」される国公立大学』(岩波書店、2021年)
 小泉内閣時における国立大学法人化以来、大学の研究・教育環境は悪くなっている。特に人文科学のそれ。「目先の経済成長に結びつかない文系を切り捨てる」「新自由主義的大学改革」の波が次から次へと打ち寄せている。

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・リチャード・F・トーマス『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』(YAMAHA,2021年)